今回は、ひとの発達において何度か訪れる「こころの危機」のうち、特に現代女性に起こりやすい危機についてお話したいと思います。
こころの危機とは?
ひとは生まれてから、終りを迎えるまで一生発達し続ける生きものです。
その節目節目におとずれるのが「こころの危機」です。
この危機の中で、一番良く知られているのは、青年期に訪れる危機で、「自分とは何か?」という問に悩み、それまで親に与えられていた価値観や考え方について考え直し、自分独自の生き方を見つけていく、大切な時期です。この過程を経て、ひとは確固とした「自分とはこういう存在」というもの(アイデンティティ)を獲得するのです。
現代女性特有のこころの危機
こういった危機をいくつも乗り越えながら、ひとは成長していくでのですが、私は特に現代女性に特有の「こころの危機」があるように思います。
それは、出産・育児を経験する中で起こる危機です。
特に近年の、女性の社会進出とも関係していると思います。
出産、育児ともに大変なライフイベント、大きな仕事です。
イクメン、男性の育休など、世間では男性の育児参加はもてはやされていますが、実際育児は女性が中心に行っている部分が多いと思われます。
出産、育児を期に、女性は一旦これまでの生き方を「一時停止」することを止む無くされます。
いくらバリバリと仕事をして、キャリアを積み上げてきていたとしても、です。
そして、出産を終え、育児の時期に入ったあと、職場や社会への復帰をいつにするのかという問題もあります。
出産前から、ある程度夫婦間で合意があって、育児の分担がされていたり、仕事への復帰の時期が早い場合は問題なくもとのアイデンティティに戻っていくことができるかもしれません。
しかし、それ以外の場合、さまざまな理由で、思っていたように復帰できない場合、
これまでのアイデンティティが崩れていくことになるのです。
子どもは可愛い、大切にしたい。
でも子どもを優先すると、自分のこれまでの生き方はおいていかないといけない。
どちらも大切な価値観の間で、引き裂かれそうになります。
新しいアイデンティティをつくって、ますます自分らしく
この出産育児を経験して起こる危機も、他の発達段階の危機と同じく、乗り越えることができれば、更に新しい自分へと成長することができます。
乗り越えるためには、自分だけで抱え込んでしまうのではなく、気を置かずに話せるひとに自分の事を話してみる、これが第一歩だと思います。
話してみることで、自分が大切にしたいと思っていることが自然と輪郭を持って感じられてくると思います。
どうか、あきらめたり、ガマンしたりしないでください。
あがいてもがいて自分なりの答えや着地点を見つけ、さらに輝く女性がひとりでも増えてほしいと願っています。